めまいと難聴の関連性

 眩暈も感音難聴も内耳神経由来の神経(前庭神経、蝸牛神経)の障害によって引き起こされます。眩暈の種類には前庭神経炎、メニエル病、良性発作性頭位眩暈、前庭型メニエル病、等専門的に述べたらきりがなく、難聴についても老人性難聴、突発性難聴、メニエル病、蝸牛型メニエル病、騒音性難聴、等様々な分類がなされております。
しかし一般的にはきっちりと診断できる症例はむしろ少なく難聴患者さんには良く聞いてみると眩暈を伴った時期が有ったり、眩暈患者さんでも耳鳴を伴っていたり、聴力検査をすると可なりの聴力障害を認めたりする場合が少なくありません。当然の事ながら眩暈の元となる前庭神経も難聴の原因となる蝸牛神経も同じ内耳神経由来ですから当然と言えば当然です。又これらの神経に栄養を送っている血管も内耳動脈という同じ血管です。
当院では多くの神経障害はそれに栄養を送っている血管の動脈硬化にあると考えており、その治療で眩暈はほとんど止まりますし、難聴においても多くの方でかなりの改善を認めます。眩暈が中心に起こる患者さんも有れば難聴だけを訴える患者さんもおられます。一体どこが異なって症状の違いが有るのか?末梢循環は非常に細かくて現在の検査では殆どわかりません。しかし当院では血管を中心に治療を進めてきてかなりの詳細が判ってきました。血管の状態は現在の検査では直接的に判らないのでみんな気が付いていないだけです。ここにそのヒントを書きたいと思います。
人間の血管は個人によってその分布や性状がかなり異なる事が判ってきました。一人一人の顔の表情が異なる様に血管も可なり異なります。何が異なるのか?実は血管の太さにかなりばらつきが有ります。例えば一側の難聴が有る患者さんが有るとしましょう。右の難聴が有って左は正常とします。この患者さんの血管年齢を測ってみますと殆どの場合で右の血管年齢が高いのです。つまり難聴の左右差は血流の差によるのです。
動脈硬化が酷い方に難聴が有る訳です。しかし血中のコレステロールも血糖値も理論的には左右の血管で同じですから、血管の細さが一番の原因であると推測されます。それを裏付けるようにもし脳梗塞を合併すれば右側、緑内障が酷いのは右側、足の血行が悪くなれば右側と殆ど右側ばかり悪くなります。人間の血管は発生学的に述べると左右は全く別々に発達してゆきますので、そもそも左右差が有って当たり前なのです。
左右差も異なりますが、疾病の起こりやすい部位が各個人によって異なるのも血管の分布のばらつきによるのではないかと当方では考えております。内耳においても眩暈を主に訴える患者さんでは内耳動脈の中で前庭動脈の血管が細いのでは?難聴を主に訴える患者さんでは蝸牛動脈の発達が悪いのではと考えております。
これらの血管は現在の医療検査技術では全く見えませんから想像の域を超えないのですが、見えないからこそ様々な治療効果から推論しなければなりません。

 難聴に関しては当方の治療効果から動脈硬化が原因であるとほぼ言えます。血流を改善してやれば聴力が改善するのですから。つまり難聴が酷い方は蝸牛動脈の血管がかなり詰まってきていると推測できます。しかし老人性難聴が酷くなっている方でも明かな眩暈を訴えない患者さんが多いのです。ここに眩暈という疾患の特徴が有ります。
蝸牛動脈の動脈硬化は確実に感音難聴を引き起こしますが、それなら同時に前庭動脈の血行障害も起こっており、眩暈も起きそうですが実は眩暈は急な血流障害が起こらないと起こりません。当然前庭動脈の血流も低下して前庭神経の機能も低下しますが徐々に血流が低下していく場合は明かな眩暈は起こりません。
それはめまいにはそれを止める為の内耳以外の部位の働きが有るのです。視覚、脳幹,小脳、反対側の三半規管、大脳皮質、が働いて眩暈を起こさなくしているのです。これを眩暈の代償機能と言います。ですからゆっくりと前庭機能が低下してゆく場合には患者本人は殆ど眩暈を自覚しません。ですから眩暈を自覚するのは急な前庭機能の低下を起した場合だけです。
その原因としてはやはり急激な血流障害が原因のトップとして挙がってくると考えられます。
何故かと言えば当院で動脈硬化の治療が完成すればめまいを訴える患者さんは殆どいなくなるからです。

 ところで現代の医療技術でも本当の前庭機能の低下を判断するのはかなり難しいのです。耳に水やお湯を入れて人工的な眩暈を起こす有名なカロリックテストも内耳の明かな左右差が無いと判断できませんし、どの程度障害を受けているかの判断も難しいのです。簡単な前庭機能の検査は目をつむって片足立ちをしてみる事です。
目をつむると代償が働きにくくなる為本当の前庭機能が現れやすくなります。
例えば日中は全く眩暈を自覚しないが夜寝ていてトイレの為に起きようとして暗がりの中を動くとふらつきを感じる、このような場合は視覚の代償によって日中はめまいを感じていないが視覚の代償が取れる暗がりでは眩暈を感じる、つまり前庭機能がかなり低下していると考えられます。

 つまり程度の差はあれ、中高年の眩暈や難聴は動脈硬化が原因である場合が殆どです。
難聴が存在する場合(他覚的であろうが自覚的であろうが)、内耳を含めた脳動脈硬化が存在するので当然の事ながら前庭神経も障害されているので、いつ眩暈が起こってもおかしくないという事です。

 では青年や小児の場合は如何でしょう?最近当院でも成人や小児でも難聴やめまいを訴える患者さんが結構増えてきております。動脈硬化は中高年だけのものでしょうか?
実は最近の日本人は若年でもかなり動脈硬化疾患が増えてきていると感じております。心筋梗塞や脳梗塞が代表的疾患でやはり中高年に多いのですが、当院の調査では花粉症もアトピー性皮膚炎も喘息も明かな動脈硬化疾患である事が判ってきております。
ここ十年の日本人のコレステロール摂取量はなんと欧米人より多いのです。また若い人は甘いものに目が無くて摂取量が確実に増えているのです。当然血中LDLコレスレロールは上がりますし、血糖値も上がってきております。
食事の面からも青年の動脈硬化が増えて当たり前の状態なのです。私が学生のころは花粉症については成人では25人に1人、小児の花粉症は見たくても患者さんがいませんでした。所が現在は如何でしょう。小児の花粉症だらけです。
つまり小児、青年の難聴眩暈に関しても動脈硬化の影響が強く疑われます。血管年齢検査(baPWV)は青年や小児ではあまり有効ではありません。何故ならまだ検査の技術が進歩しておらず信頼性が置けません。
早く検査の精度を上げることが望まれます。

一度、当院にお電話ください。TEL: 0740-32-3317