めまいと難聴の関連性

眩暈と難聴は別々の疾患として述べられることが多いのですが実はそうではありません。例えば眩暈と難聴が同時並行して起こる疾患の代表にメニエル病があります。耳が詰まったような耳閉感、耳鳴と共に目が廻ってきます。眩暈のよく起こるときは聴力もかなり変動します。眩暈の改善と共に難聴も有る程度落ちついてきます。でも実はこのメニエル病はそれほど沢山の患者さんがおられる訳ではなく当院でもあまりお目にかかりません。

次に眩暈を起こす代表的な疾患を二つ挙げます。

前庭神経炎

教科書的には酷い眩暈の代表として前庭神経炎という病気が有り突然の激しい眩暈が起こり割と長時間続く事が特徴とされております。酷ければ一週間から二週間入院を要する様な疾患です。実はこの疾患もそんなにお目にかかる病気ではありません。一年に一度見かけるかどうか?

良性発作性頭位眩暈

皆さんが眩暈で耳鼻科を受診されて診断名として良く告げられるのが良性発作性頭位眩暈という疾患です。頭を動かすとめまいがする、ある一定の頭位に持ってゆくと眩暈がする、頭の位置を変えると治まる。耳鼻科へのアンケート調査では一番に上がる疾患です。
耳鼻科へ行っても眩暈のお薬を貰って一定時間が経つと何と無く治ってしまう。この様な患者さんが非常に多いのではないのでしょうか?この疾患も眩暈が主で難聴は起こさないとされております。

 

メニエル病の次に代表的な眩暈疾患を二つ挙げましたが難聴と何の関係がと思われるでしょうが、ではこの上の二つの疾患できちっとした聴力検査が行われているのでしょうか?もし聴力検査が行われていても有る程度聞こえていたら問題無しとされている場合が殆どです。勿論当院では眩暈が主訴の患者さんにも必ず聴力検査を行いますし又眩暈の改善後のも聴力検査を行って変化が無いかを必ずチェックしております。このパターンは私が医師になってからずっと続けてきた事です。この様にして治療と並行して詳しく聴力を測ってゆくと多くの場合に眩暈改善と共に聴力の改善(程度の差はあるが)を認める事に気が付いたのです。特に軽度の低音の難聴はかなりの頻度で見つかります。これを異常と考えるか、そうではないか。

私は元々眩暈も内耳血管の動脈硬化による血行障害から起こると考えておりましたから、同じ血行支配にある蝸牛神経も障害を受ける可能性が高いと考えており、しつこく聴力を調べてきたわけです。一般の耳鼻科へ眩暈で行かれて聴力を測定しない耳鼻科医もおりますし、まして眩暈が収まった後の聴力を測定する医師など殆どいないと思います。
当院では眩暈症例に対して抗眩暈剤と共に少量のステロイド剤をよく使用します。それは少量のステロイドは内耳血流をかなり改善させる作用が有るからです。当然聴力も薬の影響を受けるものと考えておりました。

突発性難聴

一方難聴疾患に目を向けると代表的疾患に突発性難聴が有ります。
最近の論文ではこの疾患を起こす人は動脈硬化がかなり進んでいるとの報告が沢山見られる様になってきました。 私はもう7~8年前からこの疾患は特に動脈硬化が原因であるとして治療を行ってきました。この疾患は蝸牛神経が選択的に障害されるのですが、問診や治療の経過を詳細に検討すると程度の差はあれ眩暈の合併が非常に多いのです。突発性難聴患者さんを診て眩暈が無いと患者さんが言われてもしつこくフレンツエル鏡で眼振の有無を徹底的にチェックしている医師がどれくらいいるのでしょうか?もともと眩暈も難聴も当院では動脈硬化血管の血流低下による神経障害が原因であると考えてきており、眩暈を起こす前庭神経も難聴を起こす蝸牛神経も同じ内耳動脈支配ですから当然同時に障害される可能性が高いのです。

低音障害型難聴

次に一般によく見かける低音障害型難聴について述べます。これは聴力の低音部だけが障害され難聴を起こす疾患ですが、酷くなるとメニエル病への移行が考えられている疾患であり当然眩暈の合併が十分考えられる疾患です。どうして低音部が障害されるのか?それは内耳神経の蝸牛神経の中で低音部の神経は一番先端部にあり当然血行も一番先の最も悪い部分に有るのです。つまり動脈硬化の一番影響を受け易い所に有るのです。その疾患が酷ければメニエル病へと移行する事を考えれば如何に眩暈と難聴の関係が深いか、お分かり頂けるでしょう。

騒音性難聴

次に騒音性難聴について述べてみます。騒音下の条件で長期間生活しているとしばしば難聴を起こします。これを騒音性難聴と呼びますが同じ環境下でも難聴を起こさない方もおられるのです。どこが異なるのでしょうか?答えは動脈硬化です。ここ数年で海外の論文において騒音性難聴の持ち主は動脈硬化症がひどいという報告が非常に多く見られるようになってきました。動脈硬化が原因ですから当然眩暈の前庭神経も障害されますから眩暈も起こし易くなります。当院へは騒音性難聴だけで来られる患者さんはそんなに多くは有りませんが目眩を主訴としてこられて問診と聴力検査の結果から騒音性難聴と診断する患者さんが増えてまいりました。一般的に騒音性難聴は改善しないとされておりますが当院の動脈硬化治療をされると聴力が改善する方は沢山おられます。もちろん目眩も消失します。これだけでも海外の論文における騒音性難聴と動脈硬化症の関係は当たっていると思います。

老人性難聴

次に難聴の中で最も多い老人性難聴について述べてみます。以前は老人の難聴は老化だから仕方がないとされてきましたが、実は年をとっても難聴のない方はたくさんおられます。これも動脈硬化が原因です。最近NHKの番組で耳鼻科の専門医が老人性難聴の原因ははっきりと動脈硬化ですと述べられておりました。私は以前からそう述べておりましたが誰も認めずやっと認められたか、と思っております。たまに目眩を訴えて外来へ来られる方がおられますがそれほど多い数では有りません。なぜならこの疾患はゆっくりと進行して内耳のめまいを起こす前庭神経自体もゆっくりと両側平行して悪化する為、目眩を起こしにくい特徴があります。しかし当然ながら両側の前庭神経はかなり機能が低下する為ふらっとするとか足元がおぼつかない、少しよろけるというような症状が多いのです。この場合傷害されているのは内耳だけでは有りません。足の筋肉の機能低下、脳幹や小脳の機能低下など全身に影響が及びます。このような方の血管年齢は非常に高く100歳を超えている場合が殆どです。むしろ難聴やめまいより脳卒中や心筋梗塞の心配をしなければなりません。きちっと治療される方は少ないですが、治療が完成して動脈硬化が改善すると足元がしっかりとしてよろける事が無くなり小走り位は出来るようになります。聴力に関しては程度の差はあるものの改善します。

当院ならではのめまいと難聴に対するアプローチ

当院では一般耳鼻科に先駆けて7~8年も前から動脈硬化治療に専心してまいりました。コレステロールと血糖値の治療を行い動脈硬化治療が完成すると眩暈を主訴にして来られた患者さんの聴力もかなり改善しますし、一方難聴を主訴として来られた患者さんのたまに起こっていた軽い眩暈も全く消失してしまいます。この事は内耳血管を完全にきれいにできる当院だからわかる事だと思います。
 以上眩暈を主とする疾患と難聴を主とする疾患の代表例を挙げて説明しましたが、いずれも単独症状と言う事は無く眩暈が主でも難聴の合併が有り、難聴が主でも眩暈の併は良くあると言う事です。
 この事から難聴と眩暈は非常に密接な関係があると考えられます。

一度、当院にお電話ください。TEL: 0740-32-3317